相続事件
• 相続人間での妥当な分割を実現するための遺産分割協議、遺留分に配慮した遺言書の作成。
• 相続人間の対立により相続人の死後数年間遺産分割協議ができなかったために売却できなかった土地につき、相続人全員の信頼を得て円満な遺産分割協議を実現して数億円で売却し、これを相続人間で分配。
• 依頼人不知のうちに被相続人が養子縁組をして、この養子に全財産を相続させるとの遺言書を作成していたため、依頼人には遺留分しか残らない事案につき、養子と話し合って養子の老後の生活が立つように配慮して養子の信頼を得て、適正な分配をし、相続財産を数億円で売却。
• 裁判所選定の鑑定人が被相続人の自筆ではない可能性が高いという鑑定書を作成した事案につき、終結間際に依頼を受けて、特殊な平仮名の用法であることから被相続人の自筆であることを立証して、自筆証書遺言の有効性を認定させる。
数億円を超える遺産につき被相続人の自筆証書遺言につき裁判所選任の鑑定人が被相続人が書いたものではない可能性が高いという鑑定結果を出し、裁判所は相談者が依頼していた弁護士の再鑑定の申立を却下して鑑定人の鑑定結果に基づいて判決手続に進むという段階で相談に来られたことがあります。
この事案については遺言書が用いている平仮名に特色がありました。
万葉集は「万葉仮名」といって全て漢字で書かれているということはご存知と思いますが(薬師寺の「仏足石歌碑」も参照してください)、平仮名は漢字を崩したものであり、特にルールはなかったので明治の初めの頃は各種の平仮名が混在していました。
この遺言書を書いた被相続人は大正生まれなのですが、被相続人のお母さんは明治生まれで学校の先生をしていました。
被相続人はお母さんから文字を習ったものと思われ、特殊な平仮名を使っていたのです。
私は、奈良教育大学の資料室で明治の初めの頃の習字の教科書ではこの特殊な平仮名も使っているということを確認しました。
仮に相談者がこの遺言書を偽造したとすれば、「被相続人がこのような特殊な平仮名を使っている。」ということを立証しようとする筈ですが、相談者はこの遺言書には特殊な平仮名が使われているということに気が付いておらず、「被相続人がこのような平仮名を使っている。」という資料を提出していませんでした。
ですから、この遺言書は相談者が書いたものではないことは明らかです。
• 認知症の被相続人の遺言能力を詳細に検討し、自筆証書遺言の有効判決を獲得。
遺言書を作成した当時、被相続人は認知症であったと思われ、筆跡が平常時のものと異なったのはその影響によるものと思われますが、健常であったときに書いた筆跡と認知症になった時に書いた筆跡とを比較した場合異なっているのは当然のことで、そのことを考慮していない鑑定は失当です。
一般に長谷川式と言われる認知症のテストでは30点満点で20点以下の場合は認知症である疑いが強いとされていますが、この被相続人は 16点しかなく、相手方は「長谷川式で19点である遺言書について遺言能力がない。」とする東京高裁の判決を出してきました。
私は「遺言能力というものは一律に決めれるものではなく、遺言内容によってはある程度認知症であっても遺言能力はある。」と考えており、そのことを考慮していないこの東京高裁の判決は妥当ではないと考えています。
長谷川式については、点数だけが問題なのではなく、「どのような質問に対してどう答えているのか?」ということが大切であると考えますが、この被相続人の答えを見るとこの遺言書の内容については十分遺言能力があると思われます。
裁判はもう終結間際でしたが、私はこれらの点について数百ページに及ぶ準備書面を出してこの遺言書が有効である旨の判決を得ました。